カエルツボカビに関するQ & A
1:カエルツボカビって何?
A. 真菌(カビ)の1種です。分解菌あるいは腐生菌としてキチン、セルロース、ケラチンといった分解しにくい物質を栄養としています。このため、カエルでは皮膚、オタマジャクシでは口に感染します。
2:カエルツボカビの何が問題なのですか? その1
A. 両生類、特にカエルにカエルツボカビが感染すると、多くのカエルが死にます(致死率90%以上)。さらに、伝播力が強く、次々に広がっていきます(胞子100個程度の感染で、カエルが発症します)。このため、世界中で猛威をふるっており、特にパナマでは、カエルツボカビが侵入してから僅か2ヶ月の間に生息していたカエル集団が全滅したという報告もあります。また、これまでに北中南米、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランド、欧州と世界中で確認されています。現在では、このツボカビ症が、地球規模で進行している両生類の劇的な生息数の減少や絶滅をもたらしている主な原因ではないかと考えられています。
3:カエルツボカビの何が問題なのですか? その2
A. カエルツボカビは、動物に寄生していなくても、野外で長いときには7週間も生き続けます。そして、カエルなどの動物が近くに来ると再び感染します。一旦、野外にカエルツボカビがはびこると、環境中からカエルツボカビを取り除くことは不可能です。このため、世界中でいろいろな対策がとられている現在でも、相変わらず猛威を振るい続けています。
4:カエルツボカビで、何が重要ですか? その1
A. 絶対、野外にカエルツボカビを出さないことです。一旦、野外にカエルツボカビがはびこると、根絶することは不可能です。
5:カエルツボカビで、何が重要ですか? その2
A. 日本には、大変貴重な両生類が数多く生息しています。世界最大の両生類オオサンショウウオは代表的な例です。その他、日本にしかいない両生類をツボカビから守らないといけません。アメリカでは、固有種であるアメリカサンショウウオにも感染が広がったり、アリゾナ州のタラフマラ・カエルがカエルツボカビによって死に絶えたとも報告されています。
6.カエルがいなくなると、何がおきますか?
A.自然生態系の食物連鎖構造に影響が出ます。つまり、 カエルの数が減ってしまうと、カエルを餌としている動物の数も減ります。カエルの絶滅が他の動物の絶滅を招く可能性があります。たとえば、カエルを食べる動物としてサギなどの鳥類やヘビなどの爬虫類が減ります。カエルやヘビを常食とする種類のタカも餌がなくなります。オタマジャクシやカエルを食べるタガメやトンボの幼虫などの水生昆虫も減ります。あまり知られていませんがイリオモテヤマネコもよくカエルを食べます。また、カエルはかなりの大食漢です。沢山の虫を食べる益獣で、カエルがいなくなると害虫が増え、農業被害が増える可能性があります。
7.どうしてこんなに世界中にカエルツボカビがいるのですか?
A. 元々アフリカが起源で、アフリカツメガエルが世界中に輸出され、それとともにツボカビも拡散していったと考えられています。他に、ウシガエルや、ペット用あるいは展示用として取引されている両生類が伝播の役割を果たしている可能性もあります。また、養殖魚や観賞魚とともに輸送される水にツボカビが含まれていて、それによって拡散した可能性も考えられます。また、人の様々な行動が、遊走子を含む土壌や水を、無意識にいろいろな場所に運んでしまうこともあります。
8:カエルツボカビはどうやって感染するのですか?
A. 両生類の皮膚に感染したカエルツボカビは、そこで増殖して、鞭毛の付いた遊走子を水中に放出します。それが水中を泳ぐことで、他の両生類に感染します。そのため、ツボカビ症の予防には、水の管理が重要です。
9:人には感染しないですか?
A. カエルツボカビは両生類(無尾類、有尾類)に感染することが明らかになっていますが、人に感染することはありません。ただし、人は手や靴に付着した病原体を別の場所に運んでしまう危険性があるので、カエルツボカビに汚染されている可能性のあるカエルを取り扱ったり、生息地に行った場合は、手や靴、備品などを、徹底的に消毒する必要があります。
10:熱帯魚のような魚には感染しないですか?
A. 感染しません。人を含む哺乳類、鳥類、爬虫類にも感染しません。
11:カエルツボカビに感染したらカエルはすべて病気になりますか?
A.カエルの種類によって違います。少なくとも、もともとの宿主であるアフリカツメガエルは無症状で、また、外来種であるアメリカウシガエルは抵抗性があるといわれています。しかし、多くの種類のカエルがツボカビに感染すると病気になると考えられています。
12.ツボカビ症になったカエルはどんな状態になるのですか?
A.食欲不振、沈鬱などの他の病気と区別がつかない症状で始まり、症状が進行するにつれて縮瞳、筋協調不能、縮こまった独特な姿勢、立ち直り反射の消失、開口、広範な皮膚の脱落などが現れ、発症してから2~5週で死亡します。ただし、全てのカエルが同じような症状を示すわけではありません。実際、感染してから3~4日で死亡したり、カエルの種類によっては表面に大量の粘液が分泌されるものもありますし、全く見た目に異常に気がつかない場合もあります(突然死)。
13:みただけで、カエルがカエルツボカビに感染しているとわかりますか?
A.カエルの種類、水生か陸生かによって、症状が違うため、みただけでは、ほとんどわからないと思います。しかし、何か、いつもと様子が違うと感じたら、最寄りの獣医師にご相談ください。
14:カエルツボカビに感染しているかどうか、どのように診断しますか?
A. 診断は病理組織検査や遺伝子診断(PCR)法で行ないます。
15:家で飼っているカエルの検査をしてほしいのですが・・
A. 検査はできます。カエルの体の表面を綿棒でふき取って、検査機関に送ると検査してもらえます。しかし、一般の飼育者から直接の検査依頼はできませんので、最寄りの獣医師に相談してください。
16:検査はどこがしてくれるのですか?
A.国立環境研究所が検査を担当します。しかし、一般の飼育者から直接の検査依頼はできませんし、専用の検査依頼書が必要です。必ず、最寄りの獣医師に相談して、依頼書を添えて、検査依頼をしてください。(2007年2月から開始)
17:検査は有料ですか?
A.一般の飼育者や展示施設などからの検査は無料です。商業ベースで繁殖されている方は、関係機関(麻布大学)にご相談ください。
18:検査にどのくらいの時間がかかりますか?
A. 検査機関が検体を受け取ってから、7日くらいかかります。
19.検査結果はどのように教えてもらえますか?
A. 検査依頼書を作成してくれた獣医師に連絡がいきます。獣医師から結果を聞いてください。
20:カエルツボカビに感染していることがわかったら、そのカエルはどうしたらよいですか?
A. 治療ができます。また、室内であれば、有効な消毒方法もありますので、カエルからカエルへの感染も防げます。そのためのマニュアルも用意してありますので、マニュアルに従えば、そのまま、カエルを飼い続けることができます。決してカエルを野外に放してはいけません。最も重要なことは、カエルツボカビを野外に出さないように、一人ひとりが細心の注意を払うことです。
21:カエルツボカビに感染したカエルや病気のカエルは、飼いたくありません。どうしたらよいですか?
A. 引き取ります。最寄りの獣医師に相談してください。どんなことがあっても、カエルを野外に放してはいけません。
22:カエルが死にました。どうしましょうか?
A. 可能であれば、焼却してください。また、清潔なビニール袋などに密封して生ゴミとして出すこともできます。間違っても庭に埋めるなどしないで下さい。わからないことがあれば、最寄りの獣医師に相談してください。
23:カエルを飼っています。何に注意すればいいですか?
A. 長い間、カエルを飼育していて何も問題がなければ、いつものとおり飼育を続けてください。しかし、今まで経験したことのない異常に気がついたら、カエルツボカビの検査を受け、検査の結果がでるまで、カエルツボカビがいるかも知れないと思って、取り扱いをしてください。
特に、新しいカエルを飼い始めたときには注意をしてください。
24:新しくカエルを買いたいけれど、注意することは?
A. 元気がない。皮膚に赤い斑点がある。体の表面に粘液が異常に付いている。表面がなんとなくすすけている。脱皮皮が斑点のように付いている。同じ水槽に具合の悪いカエルがいるあるいは死んだカエルがいるなどの異常が見られる場合は要注意です。しかしながら、みただけではわかりません。可能であれば、何らかのカエルツボカビ検査を受けたカエルを購入しましょう。
25:新しくカエルを買ったけれど、注意することは?
A. 検疫が必要です。60日間は、他のカエルと一緒にしてはいけません。また、新しいカエルに触れた飼育者の手や飼育器具を消毒しないまま、他のカエルに使わないでください。新しいカエルにツボカビが感染しているかもしれないというつもりで取り扱ってください。前から飼っているカエルを守るためにも
26:どこの国から輸入されたカエルがカエルツボカビに感染していますか?
すでに、世界中で流行しているので、どの国が危ない、どの国が安全ということはありません。また、たとえ、カエルツボカビの発生のない国であっても、流通している間に感染してしまうこともあります。