私がはめてヘビを見たのは6歳ぐらいの夏だった。
不幸にも庭に迷い込んだガーター・スネークという小さい、きれいな無毒ヘビだった。
が、僕が見たときは叔母はスコープでたたいて殺していた。
「なんで殺すの?何か悪いことしたの?きれいなヘビだよ、可愛そうじゃない?」騒ぎを聞いて叔父も庭に出てきた。
「リチャード、心配するな。ヘビって、みんないやなやつだ。いいヘビはね、死んだヘビだけさ。(The only good snake is a dead snake.)「うそだ!」とは思ったけれども、ヘビを救うことはできなかった。
しつけの厳しい我が家では、大人のすることに子供が口出しをすることは堅く禁じられていた。
あえて口出しすると、びんたが飛んでくることも少なくはなかった。
わが生家と並んだ家々には立派な芝生が生えていた。
その芝生のどれにも大きなミミズが驚くほど数多く住んでいて,夜露が降りてからあちこちに地面から顔をのぞかす。
だからそばに流れている河川敷からミミズが大好きなヘビやガマガエルが出てきて人家の庭をうろちょろするのも無理はなかった。
四駒漫画が新聞で連載されるのがはやった時代だった。
僕のヒーローはスーパーマンだった。
「弾丸より速く空飛ぶ」スーパーマンが鉄道のレールに縛られた美女を危機一髪で救いあげるかのスーパーマン、多くの少年のあこがれの的だった。僕も、夢の中でスーパーマンに変身していた。が、美女を意識するのには、まだ十年早い幼い僕がすくい上げるのは、ヘビだった。
叔父、叔母のような悪人が棒やスコープを「美蛇」の上に振り下ろそうとする瞬間、スーパーボーイ・ゴリスが空から舞い降りて、ヘビを抱き上げて、高く高く青空へ運んでいくのだった。
遠い、遠い沼地へ、餌のカエルやミミズが豊富な山地へ、悪人が絶対に入り込めない僻地へ飛んで、優しくヘビをおろすのだった。
そして、「幸せに暮らすんだよ」と別れの言葉をかけながら、正義の味方、スーパーボーイ・ゴリスが青空へ消えていくのだった。
懐かしいな、あの少年の夢が!
(写真は4年生の頃のゴリス少年)
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